第6章 pursuit
「気を付けて行って来てね。本当に無理だけはしないでね」
「わかったよ……」
「うん、いってらっしゃい!」
最後には笑顔で見送ってしまうのだから、堀川はなかなかに精神的に強固のように思えた。門を潜る矢先……山姥切は理仁へと視線を向けていることに気付く。理仁はそっと微笑んで、山姥切へと手を振ればぎょっと目を見開き、ぷいっと顔を背けてしまった。いつも通りの反応に安堵する。
鋭い視線を何処から感じて、犯人を探せばやはり和泉守だった。声を発することなく、口の動きだけで和泉守は理仁にだけわかるように伝えた。
【国広に何かしたら殺す】
はっきりと殺意を込められてしまい、理仁は溜息を吐いて和泉守へと手を振った。和泉守もまた顔を背けた。ここには照れ屋か無愛想しかいないのか、と理仁はぽつりと思うのだった。
出陣組を見送った後、理仁は管理室に籠り戦いの盤上をじっと見つめていた。
「主さん、お茶」
「ん……? ああ、ありがとう。堀国」
「その呼び名、どうにかならないのかなぁ」
「ならないな」
真剣な眼差しで戦場を見つめていた理仁の元に、お茶の入った湯呑みを二つお盆に乗せて堀川がやってきた。常に第一部隊に配属され、常に戦いに身を置いていた堀川にとって管理室から眺める戦場は新鮮そのものだろう。その証拠に、不思議そうに部屋を眺めてそれからモニターに目を向けた。ぱちくりと瞬きを繰り返している。
堀川から湯呑みを一つ受け取ると、再びモニターに目を向けた。いつも通りに見えるが……何処か嫌な予感が理仁の心の中に浮上し始める。それは戦う和泉守の姿に、何かしらの違和感を覚えていたからだ。