第6章 pursuit
「兼さんこれはどういうこと!? 兼さんの希望だって……っ、僕がいると迷惑ってことなの!?」
「落ち着け、国広。これは俺の勝手な懸念だ。別にお前が悪いとか、駄目だとかいうわけじゃない。俺が勝手にお前に共に来てほしくないだけだ」
「兼さん! 理由をちゃんと教えてっ、それで納得出来たら……大人しく留守番してるから」
まるで懇願するように、堀川は少しだけ今にも泣き出しそうな声色でただ和泉守に訴えた。和泉守は一度理仁へと視線を向けると、そのまま見つめて言葉を発した。
「俺がお前の納得のいくように説明できるはずねぇだろ。ガキじゃねぇんだ、ちゃんと理解しろ。今回の出陣、お前がいると足手纏いになる。それだけだ」
「……やっぱり、僕がいると迷惑ってこと!?」
「迷惑とかそういうんじゃねぇ! だが今回ばかりは駄目だ。駄目なんだ……」
「それって、前の主に関係しているから?」
堀川がそう言うと同時に、和泉守は堀川へとようやく視線を向けた。「やっとこっち向いたね」と堀川が小さく呟くと、罰が悪そうに横へと目を逸らした。
「兼さんはいつもそうだ……肝心なことは何も話してくれなくて。何を思ってくれてるのか、とってもわかりずらいんだから。ほんと、誰かさんと似てるよね」
「……誰の話だよ」
「さあ? 誰だろうね。誰かさんも兼さんと一緒でいつも肝心なことは言わなくて、なのに凄く頼りがいのある背をしていて。けれどいつも一人で何かを背負っているようにも思えて。ほっとけないんだよね」
「だから、誰の話だよ……ったく」
「本当に今回だけなんだね」
「ああ……」
「わかった」
すると堀川は焦っていた様子も、徐々に薄れて気付けば穏やかな表情へと変わり、ゆっくり掴んでいた手を離した。