第6章 pursuit
もっと色気のある感じがよかったなぁ、と内心思いながら理仁に跨る和泉守に理仁が想像していたような感情は今のところないように思えた。ただきつく理仁を睨み付け、苦々しく言葉を吐き捨てる。
「だいたい、俺はあんたが気に食わなくて仕方ねぇんだ。岩融の件も、大演練会の件もあんたはあっさりと解決して何事もなかったかのように過ごして。何もかも見透かした顔しやがって、それでいて……退屈そうな目をしやがって」
「……」
「あんたのその目を、俺は知ってる。俺が……かつてそうだったように」
「一緒にするな。俺とお前は違う、だから鏡合わせのように重ねて俺を通して、過去の自分を見るのはやめろ。和泉守」
「過去は変わらない、変えられない。変えちゃいけない! ちゃんと、わかってんだろうな」
「何が言いたいのかわからないな」
和泉守は胸倉を掴んでいる手の力を、更に強く込めた。ぐっと苦しく感じて、理仁は僅かに顔を歪める。
「あんたのその目は、大切な人を失った喪失感によく似てる!! それでいて、どうしてあんたがいつも退屈そうなのか俺は何となく気付いちまった」
「退屈そうに見えるか?」
「ああ、見える。あんた……何を隠してる? 本当はもっと、いい成績が残せるんじゃないのか? それなのに俺達のレベルに付き合っているから、本来の力が出せなくて退屈なんだろう? そうだろう!!?」
「まさかお前に、そんなことを言われる日が来るとはな……思ってもみなかったよ」
「答えろどうなんだ!? あんたは心の底で、俺達を馬鹿にしてるんじゃないのか!? 弱くて使えない刀剣なんて、あんたみたい上手く立ち回れそうな審神者にはそりゃ退屈だろうな!? あ!?」
「少し静かにしろ。他の奴らが起きる」
「そうやって涼しい顔してんのが、気に入らないって言ってんだよ!!」
和泉守は容赦なく拳を振り上げると、躊躇いなく理仁の頬を思い切り殴った。瞬間、部屋の襖が勢いよく開かれた。