第1章 chess
「山姥切国広、ここにいるのか?」
すると、もぞもぞと中から音がする。理仁はここが物置部屋なのだと確信して、勢いよく扉を開けた。
「な……ななっ」
「ああ、やはりここだったか。物置部屋と聞いてな、この本丸の一番陰にあって隅。あまりに単純な構造で少し面白みに欠けるが、まぁそれはいい。お前が山姥切国広だな?」
「あんたは誰だ! 人間かっ」
「俺はこの本丸の審神者、宝条理仁。ああ、理仁でいいぞ」
「審神者だと……? ふっ、神職でもない人間が神職の真似事か? ご苦労なことだな」
「そうだな。さあ、早くそこから出るんだ。今からこんのすけの説明を聞いて、早速仕事に入りたい」
「勝手にしろ、俺は知らん。俺はお前を審神者と……俺の主と認めるつもりはない。俺のことは放っておけ。所詮写し、いずれ興味は失せ捨て置かれるくらいなら……最初から俺は使われるつもりはない」
「山姥切国広の情報は、ある程度知識として記憶している。それで興味が失せるかどうかを決めるのは、残念ながらお前じゃない」
理仁は強引に山姥切の腕を掴み上げると、引きずるように物置小屋から連れ出す。山姥切は信じられない! という顔で強く理仁を睨み付けると、力の限り理仁の手を振り払った。