第6章 pursuit
「あんたの普通は、一般人のそれと違うことをそろそろ理解した方がいいぞ」
「まさか国広にそんなことを言われる日が来るとは……」
「そういえば、先日の大演練会の結果が届いたとこんのすけから聞いたが。どうだったんだ」
「成績のことか? まぁ、当たり障りもない新人ならではの結果だった」
「順位は……?」
「そんなものが気になるのか? 五位だったな」
「は?」
「だから、審神者成績は総合五位だったと言ったんだ」
「は……?」
山姥切はどういうことだと言わんばかりに、ぽかんと口を開けて同じ言葉を繰り返していた。お世辞にも素晴らしい戦いだったとは言い難い演練だったはずだ。だというのに、総合五位。つまりはかなりの上位に突然躍り出たわけだ。これが呆気にとられずにはいられようか。
「……あんた、何者だ」
「人間だ。何の変哲もない、特技も何もないただの人間だ」
「嘘を吐くな。ただの人間が、いきなり銃は使わない」
「まぁそれはいいとして。……厄介なことになりそうだな」
これはただの予感だった。人の身体に慣れ始めた刀剣達が、それぞれの身に宿る心を知りそれによって今何かが起ころうとしている。それだけは理仁にもわかった。先陣を切るように、和泉守の近頃の自分に対する態度の変化がやはり一番気になる。
あまり深くは考えていなかったものの、もしも心を知らなかった者が心を知った時何を思うのだろうか? 処理しきれなくなった感情は、一体何処に行くのだろうか?
そう、これはただの予感。予感にしか過ぎないのだから、そこまで深く気にする必要はない。その必要はないはず……なのに。