第6章 pursuit
慣れない手つきで二人はようやく作業を終えると、土で汚れた手を洗い縁側で寛ぐことにした。こうして二人が何かを共にやり、穏やかな時を一緒に過ごすようになったのはつい最近のことだ。とはいっても、相変わらず山姥切は理仁への警戒を解く様子はない。
何かと理由をつけて「今回だけだ!」「仕方なくそうしているだけだ!」と言葉を付け足して、なんだかんだ過ごしてくれる。――心を寄せてくれている証拠だろうか。そんな風に理仁は感じていた。
「さっきのあんたの質問の続きだが、俺から見て和泉守はあんたにいい印象を持っていないぞ」
「そうなのか」
「はぁ……気付いてなかったのか? 大演練会が終わってから、露骨にあんたを避けているだろう」
「そうかもしれないが、和泉守はプライドが高そうだからな。上手く立ち回れなかったことに対して、一人苛立っているだけかと思っていた」
「それもあるかもしれないが。一番は、あんたが何を考えているかわからないことが原因だと思う」
「俺はいつでも、普通のことしか考えていない」
理仁が空を仰げば、満開に咲き誇る桜が飛び込んでくる。所々、桜は散り葉桜になりつつある。季節も少しずつ春から夏に傾き始めていた。少し前までは、寒い寒いと思っていたのに今では少し暑いくらいには気温がある。本丸にも季節の概念と、気温があるのかと不思議に思っていたがよくわからない次元に存在しているというだけで、理仁がいた元の世界とほとんど変わらない。
それはそれで、理仁にとっては好都合と言えた。