第6章 pursuit
「俺はあいつが嫌いだ」
彼の言葉は静かに響いて、風に乗り消える。隣にいた堀川は何とも言えない表情を浮かべた後、苦笑いをするだけで和泉守の言葉に返事はしない。
人の形を得て、それぞれが何かを思い進んでいく今。大演練会がきっかけでいい方向に変わったこともあれば、悪い方向へ変わったものもある。後者の代表例は、和泉守だろう。あの戦いの後、誰もが感心したように理仁を慕うようになっていき一人和泉守だけは違和感を胸に留めていた。
「達観しているかのような瞳も、変わらない顔色も。何もかも気に食わねぇ、あいつにとって俺達は何だ。道具か? それとも仲間か? あいつが何を考えてるのか、俺にはわかんねぇ! 岩融の件もそうだ。胸糞悪いんだよ!」
「か、兼さん!」
和泉守は苛立ちを隠さないまま、縁側から離れて走り去っていく。堀川は慌てて彼を追いかけ、縁側から離れていく。
その様子を、遠く畑から理仁だけは見て知っていた。
「……」
「おい、どうかしたか?」
「いや……何でもないよ、国広。そういえば、お前から見て和泉守はどんな奴だと思う?」
「どんな奴? そんなもの、堀川に聞くのが一番いいんじゃないのか。あいつはずっと和泉守と一緒だったんだ、詳しく教えてくれるんじゃないのか」
「堀国に尋ねたら、丸一日潰れるくらいの量を教えてくれるだろうな」
「……違いない」
二人は畑を耕し終わると、種や苗を植えたりと作業を続ける。基本的に自給自足の本丸での生活だ。畑を早めに機能させなければ、政府から送られてくる肉類のみでご飯を食べる羽目になるだろう。米も基本的には政府から支給される。意外と至れり尽くせりではあるが、栄養バランスを考えればきちんと野菜も摂る必要がある。