第6章 pursuit
「気に食わねぇ」
「……兼さん?」
縁側でとある人物を見つめていた男、和泉守兼定は不愉快そうに言葉を吐いた。和泉守のいつもと違う様子に不安気な表情を浮かべているのは堀川国広だ。和泉守は縁側から畑を見つめていた。畑の方では、自らの主である審神者――理仁と山姥切を捉える。するとまた「気に食わねぇ」と繰り返した。
「どうしたのさ、兼さん。先日の大演練会が終わってから、機嫌が悪いよね」
「お前はどう思う? 主のこと」
「どうって……うーん、普通にいい主だと思うけど?」
「そうじゃねぇ。見ただろう、あの銃を」
和泉守の脳裏に蘇るのは、白銀色の銃を構えて山姥切を庇った理仁の姿。
「審神者ってのは、戦えないものじゃないのか?」
「ああ……理仁さんが言うには、最近じゃ護身用の一種で政府から手ほどきを受けるらしいよ。だからじゃないかな」
「護身用にしては……躊躇いなく引き金を引きやがる」
「そこは理仁さんらしいと思うけどね。あの人、何かと肝が据わってる気がするし」
「……だから気に食わねぇんだよ。何でも見透かした顔しやがって、どんなことが起きても冷静に判断して場を収める。俺は……――」
和泉守は眉間に皺を寄せ、微笑みを浮かべている理仁を見ては唇を噛んだ。