第5章 promise
「……理仁」
「なんだ、国広」
理仁が嬉しそうに笑うと、ふっと山姥切が顔を上げた瞬間にその表情を見たのか、驚きかそれとも別の感情か。みるみる顔を真っ赤にし、勢いよく立ち上がった。
「く、国広?」
流石の理仁もこれには驚いた。
「理仁! お、俺は……俺はもっと強くなる!!」
「……え?」
「もっと強くなって、ちゃんと……お前の声に応えられるよう、努力する。演練の最後、俺は情けなくあんたの腕に守られた。あんなみっともない真似、もうしない」
「俺の手は、守るためにある。何かを傷付けるためにある時もあるが、基本的にはお前達を守るための手だ。気にすることはない」
「いや、俺が気にするんだ!」
山姥切の真剣な眼差しに、嘘がないことくらいすぐにわかる。だから理仁も、しっかりと彼の方へを身体を向け彼の言葉に耳を傾けるのだった。
「あんたが俺を傍に置くというのなら……俺はそれに、応え……たい。俺は三日月みたいに強くないが、あんた一人くらい……余裕で守れる男になる」
「……ああ」
「だからあんたは、俺の後ろでいつも通りどっしりと構えていてくれ。堂々と、俺達のことを……見ていてくれ。それでいい」
「ああ、約束する」
「理仁の全てを、俺に委ねてくれるくらいにはなる。その時には……いつか教えてくれ」
何が、とは言わなかったものの今の理仁には彼が何を知りたがっているのか、何となくわかってしまった。彼が知りたがっていることと言えば、思い当たるものは一つ。どう返事をすればいいか悩んでいると、山姥切は返事は不要だとばかりにそのまま部屋を出て行った。
机に置かれた湯呑みを掴む。湯呑みの中を覗けば、憂鬱そうな自分の顔が映っていた。