第5章 promise
理仁は何となく胸元のポケットにて飾り、再び山姥切を連れ会場を徘徊する。時々賑やかな声につられ、演練している場を見学しに行けばあの三日月を連れた男が別の審神者と戦っていた。見事な三日月の剣筋に、相手の刀剣はまったく手が出せず無傷の三日月が勝ち誇ったように笑っている姿がそこにはあった。
あれ相手に、自分達は中傷まで負わせたと思うと、少しだけ誇らしい気もした。
時々四方から視線を感じる。たぶん、演練での戦いを見ていた審神者達からの視線だろう。特別逃げる必要もなかったが、新人の身だ。一応わきまえるとして、視線から逃れるように場所を変える。
すると、前方から見知った人物が姿を現した。
「あ? おお、宝条か」
「ああ……田頭さん」
理仁の担当者、田頭だった。煙草を咥えて、面倒臭そうに歩いているところだった。気だるげな様子が、相変わらずで理仁は思わず笑ってしまいそうになった。
「どうだ? 大演練会は。楽しいか?」
「そうですね……思ったより力及ばず、です」
「はっはっはっ! そりゃ、お前審神者になって一ヶ月も経ってないってのに、もっと前から審神者やってる奴に勝とうなんてお笑いだろ」
「見てたんですか……」
「偶然だ。でもいい試合だった、勝負には勝てなかったもののお前は見事あの審神者自慢の刀剣を、中傷まで追い込んだ。早速話題になってるぜ? 化け物新人が現れたって」
「化け物……」
そんな呼ばれ方をするような戦いをした覚えはなかったが。