第5章 promise
「えっと、理仁だっけ? さっさと中堅クラスに上がって来なさいよ。定期的に私達は情報交換をしているから、少しは今後の役に立つと思うわよ?」
「今情報交換を求めた場合、どうなる?」
「さあ? どうもしない。初心者あるあるなら答えてあげる、でもそこそこ濃い内容になれば話は別。レベルに見合った知識を得るべきよ、それ以上を求めるならそれなりにならなくちゃね」
彼女のいう事も最もだった。ただ闇雲に情報だけ得ようとしても、それを上手く使えこなせなくては意味がない。仕方なく必要最低限な質問だけを彼女に投げかけ、本当に必要最低限の知識だけを得る。それでも、彼女のような中堅クラスと知り合えたのは良い収穫と言えるかもしれない。
それは勿論、今後の事を考えてだ。
「それなりに有意義な話だったわ、ありがとう。あ、お礼にこれをあげるわ」
湯女は何処からか椿の花を出すと、すっと理仁の髪を耳にかけそこへ花を挿す。満足したのか「あら似合ってる」と花のように笑った。
「私、赤が好きなの。今度会う時は赤い花でも持っていらっしゃい」
そう言って大倶利伽羅を連れ、彼女は去って行った。いろんな審神者がいるものだ、と椿の花を手に取ると血のように赤い花は萎れている様子もない。まるでつい先程まで、在るべき場所で咲いていたかのようだ。