第5章 promise
「ん、終わったぞ」
「ああ……助かった」
「国広」
理仁の声に反応し、山姥切は視線を合わせるように顔を上げた。
「帰ろうか、俺達の場所へ」
「……もういいのか? 演練は」
「今の俺達じゃ、上位五位は厳しいだろうな。あの男のような審神者が集結しているとなれば。それより他の審神者達と情報交換をしておきたい」
「わかった。俺はあんたの近侍なんだろう? ちゃんと着いて行く」
「……ああ、頼む」
山姥切は身体を起こすと、先程受けた傷など元からなかったかのような素振りで身なりを整えた。理仁の視線に気付くと、何となく気まずそうに視線を泳がせくぐもった声で一言告げた。
「行くぞ……」
その一言だけで十分だった。
部屋を出た二人を待っていたのは、理仁の刀剣達だった。全員しっかりと回復しており、理仁達の姿を視界に入れると元気を手を振って見せた。一番に理仁に声をかけたのは、部隊の中でも落ち着いた様子を見せる堀川だった。
「主さん、お帰りなさい。それと……折角僕達に期待してくれてたのに、負けちゃってごめんなさい」
「別に国広が謝るこたぁねぇ。俺だって、頭に血が上ってちゃんと動けなかった……悪かった」
「そんなことないよ! あのね、僕も短刀として一番に駆け出したのにその……あんまり活躍できなくてごめんなさい」
「乱が謝ることではないよ。それを言うなら私だって、山姥切さんを先に行かせるのにただ必死で力及ばずでした。申し訳ない」
「いやいや、それなら私の方こそだ。大太刀ゆえ、足が遅く皆にちゃんと着いて行けず足手纏いとなった。すまない」
各々言葉をかけてくる彼らに、理仁はふっと微笑んで一人ずつの頭を優しく撫でてやる。まさか撫でられるとは思っていなかったのか、全員がきょとんとしていた。理仁の隣でその光景を眺めていた山姥切と、少し離れた位置で見守っていた岩融を除いて。