第5章 promise
専用の道具の活躍で、傷はみるみる内に完治していく。ただの人であったなら、これ程の重症が意図も容易く綺麗に完治してしまうことなどありえない。それは全て、彼らが人ではないことの証明でもあった。理仁は体中の傷を癒し、次に山姥切の顔の傷を癒していく。
じっくりと見るまであまり気付かなかったが、山姥切の顔は男にしては非常に整っており中性的で綺麗な顔立ちをしていた。睫毛は長く、くりっとした瞳は綺麗に澄んだ大きなビー玉のようだった。作りものかと思う反面、時々触れた肌はしっかりと熱を持っている。
――……体温がある。ただそれだけで、人と認識してしまうのはどうなのだろうか。
「綺麗だな」
「……っ、綺麗とか言うな! いきなりなんだ、鬱陶しい」
「悪い、気に障ったか?」
「……別に」
山姥切は不服そうに視線を斜め下にやる。恥ずかしそう、というわけではないらしい。少しだけ薄らと嫌悪感を覗かせているところを見ると、本当に綺麗と呼ばれることが嫌なのかもしれない。どこまで本気でそう思っているのかは、理仁にはわからなかったが。
「なぁ、国広。本丸に戻ったら何がしたい?」
「……それを俺に問うのか。方針を決めるのは、あんただ」
「そうだな、ただ……お前は俺の近侍でもある。だから、刀剣代表と見込んで意見を仰いでおこうと思ってな」
「ふんっ、近侍……な……」
山姥切は何やら考え込んだ様子で、それきり黙り込んでしまう。理仁も手入れに集中しているため、それ以上の言葉は発しなかった。返答がないまま、理仁による手入れはようやく終了した。