第5章 promise
「俺は重傷なんだぞ! 痛いだろ!」
「大人しく手入れを受けろ。俺が……心配する」
「……は」
「少なくとも、俺の作戦のせいでお前達に酷い傷を負わせた。だから」
「悪かったなんて、絶対に言うなよ」
手入れ道具を持った理仁の手は、ぴくっと動いた。
「俺はそんなこと思っちゃいない、あんたの作戦が間違っていたなんて誰も思ってない。この傷は俺達が弱い証拠だ。三日月一人重傷に追い込めなかったのは、俺の力不足だ。それに三日月に中傷を負わせられたのは、もとよりあんたの作戦のお陰なんだ。だからその、絶対に謝るなよ」
「国広……」
「俺は……!」
意を決したように、山姥切は真っ直ぐ理仁の方へと顔を上げた。理仁は面食らったようにきょとんとしているが、そんなこと今は関係ない。ぐっと決意に満ちた山姥切の瞳は、綺麗な空色をして理仁の瞳の中で煌めく。
「俺は……少なくとも、あんたを……主として……認めているんだ。か、勘違いするなよ! まだ完全にそう思っている訳じゃない! 認めてもいいかなと、そう考えているだけだ!! わかったな!?」
「……あ、ああ」
「……っ、早く手入れしろ! 傷が痛い」
「ああ、そうだな。ありがとう、国広」
「国広言うな!」
なんだかんだ言いながらも、理仁の手入れを山姥切は大人しく受け始める。山姥切が素直でないことくらい、とっくに理仁はわかっていた。わかっていたからこそ、彼の口から直接自分を主とある程度認めている事実を知り、無意識に口角が上がる。嬉しい、そう素直に感じていた。