第5章 promise
「離せ! 俺はお前達政府の手入れなんて受けない!!」
「し、しかし山姥切様……っ」
「触るな! 斬るぞ!!」
「ひっ……」
今にも斬りかかりそうな光景に、理仁はやはり溜息を吐いた。そして、山姥切の名を呼ぶ。
「"国広"」
すると山姥切は、ぴくりと反応を示し荒々しかった動きを止める。しかめっ面を浮かべて山姥切は理仁の方へと顔を向けた。
「ここは俺が引き受ける、じゃじゃ馬刀剣の世話をするのも主人の勤めだ」
「し、しかし……宝条様にそのようなこと」
「俺が構わないと言っている。そこの妖精を連れて、俺とこいつ二人きりにしてくれ」
「……かしこまりました」
深々と頭を下げて、白衣を着た者達と妖精は部屋から退散した。理仁の横を通る過ぎる瞬間、男達の顔を見れば心なしか安堵しているように思えた。それもそうだろう、もしこのタイミングで理仁が入ってこなければ一人くらいは斬り殺されていたかもしれない。
襖が閉められたのを確認すると、理仁は躊躇うことなく山姥切へと近付いた。
「……なんで来た」
「お前が大人しく手入れを受けてないと、聞いたからだ。馬鹿かお前は、それとも阿呆なのか」
「……別に。あんた以外の人間に、気安く触れられたくなかっただけだ」
「なら、俺ならいいんだな?」
「断る! いてっ」
理仁は容赦なく重症の山姥切の頭を叩いた。