第5章 promise
「さてさて、俺の担当である彰人君はどんな戦いぶりを見せてくれているのやら」
佐伯は本日参加している審神者名簿を片手に、軽快な足取りをみせた。
後から追いかけて来た岩融と共に、理仁はやっと手入れ部屋へと足を踏み入れた。中では本丸でも見かけたことがある小さな妖精と、白衣に身を包んだ役人達がせっせと手入れを行っていた。
「あ、宝条様ですね?」
一人の白衣を着た女性が、額に汗を滲ませたまま理仁へと駆け寄って来た。彼女がはめていた手袋は、刀剣達の傷に触れたせいか血で汚れていた。
「すみません、もう少しお時間がかかるかと思うのですが……資源はこちらで使用しますので、宝条様のところの資源や手伝い札が消費されることはないのでご安心を」
「山姥切国広はどこに?」
「彼は……一番重傷者で、あちらの奥の部屋で手入れをしている……はずなのですが」
何故か女性は言葉を濁すと、何か言いにくそうに理仁の顔色を伺っていた。彼女の方が少し背が低いせいか、自然と理仁を上目遣いで見上げる姿勢になる。これが現代での出来事であれば、きっと少しくらいはときめけるのかもしれないが。生憎ここは血生臭い手入れ部屋。ラブコメの波動は意図も容易く四散した。
「何か問題でも起きたか?」
「問題というか……人だけではなく、妖精の手入れさえも頑なに拒んでいまして。付喪神の力に我々のような審神者に及ばぬ霊力しかない人間では、彼に無理矢理手入れをすることも出来ずでして」
「手入れ道具を貸してくれ、俺が行く」
「しかし……! 今は危険です! 気が立っているのか、暴力的でして……宝条様にもしものことがあれば」
「自分の刀剣だ。なるようになるさ」
妖精から手入れ道具を受け取ると、岩融には待ってもらい理仁は一人奥の部屋へと足を踏み入れた。襖を開ければ、予想以上の光景が広がっていた。