第5章 promise
「理仁! お前、なんであんな無茶したんだ!! あのおっさんの下手な煽りに乗らなくてもいいじゃんか」
「お前は考えなしに、その安っぽい挑発に乗りそうだがな」
「ちぇっ……俺のことはどうでもいいんだよ。お前のとこの刀剣、大丈夫なのか?」
「大丈夫だよ」
「あの、彰人様。俺達もそろそろ……」
「ああ、そうだな長谷部。悪い! 俺、観覧中に仲良くなった奴と演練する約束してるんだ。行って来るわ!」
「おう、頑張れよ」
慌ただしく去っていく彰人を見送って、理仁が踵を返そうとすると目の前に岩融と……政府審神者管理課、佐伯が立っていた。
「先程の戦い、お見事でしたよ宝条さん」
「それはどうも、佐伯さん」
「しかし驚きました、岩融が貴方のところにいるとは」
「やはり……佐伯さんところの、刀剣でしたか」
名を聞いた時から何となくはわかっていた。審神者の名家で佐伯と言えば、一度田頭から話だけは聞いていた。そして理仁の知る中で、佐伯と名の付く者はただ一人。目の前にいる着流し姿の男だけだった。最初、彼の風貌を見た時は驚いたものだ。
雪色の髪、血のように赤い瞳。世間一般的には、そういう見た目をアルビノと呼ぶ。幼さと儚さを併せ持ち、華奢な身体が一層儚さを引き立てていた。佐伯は政府の中でも変わり者とされており、特に審神者の名家でありながら政府で働く異例を持つのは彼くらいだと以前田頭が言っていたのを思い出す。
今岩融が佐伯の近くにいるのも、何となく頷ける。だが今は理仁の刀剣だ。