第5章 promise
生温かい空気が理仁と三日月の間をすり抜けていく。理仁が向ける銃口を三日月はじっと見つめながら、理仁へと視線を固定する。
「そなた、ただの審神者というわけではないらしいな」
「近頃の審神者は、研修時に剣術、武術、銃のスキルといったテストを受けて一番自分に合う戦闘スタイルの基礎を学ぶ。俺の場合は、銃のスキルだった」
「なるほど。時代と共に、新しい審神者も自らの身を守れるように教育されているということか。いやはや、これは驚いた。見事だ、理仁殿」
三日月はすっと刀を下ろすと、そのまま鞘へと戻した。しかし未だに場には重い緊張感が漂っている。それはたぶん、理仁が銃口をまだ三日月に向けているせいなのかもしれない。
「理仁殿、無礼を許してくれ。俺も少々血にあてられ、熱くなりすぎたようだ。この通り、すまなかった」
三日月が軽く頭を下げたことにより、理仁はようやく銃を下ろした。途端に政府の役員が理仁達へと駆け寄り、すぐに手当てをするよう指示を受ける。大演練会では特別の手入れ部屋が設けられているため、通常の倍の速度で傷を癒すことが出来る。
理仁は役員の一人に山姥切や、その他の刀剣達の手当てを任せた。演練の勝者は、残念ながら理仁達ではなかった。相手側の刀剣はほぼ無傷か軽傷、三日月のみが中傷を負っている。だが理仁の刀剣達は重傷を負い、山姥切がその中でも一番酷い。
三日月は綺麗な顔に傷を作ったまま、理仁へと近付いた。今の理仁の傍には一人も刀剣がいない、流石に理仁も警戒心を強めた。しかし……――。