第4章 stormy
「大丈夫か?」
「……見てわからないのか、この……馬鹿主」
「ふっ、憎まれ口が叩けるなら十分だ」
「おい、理仁殿」
三日月は一層恐ろしい顔で、切っ先を理仁へと向けていた。
「この場まで下りてくるとは、余程間抜けな主と見える。演練の決まりを読まなかったのか? どのような事態になろうとも、戦場に下り立つことを禁ずる。俺達は刀だ、戦のあとは体内の血が沸騰するような高揚感に包まれる。同時に、まだ足りぬと血を求め暴走することもある」
「そうか」
「理仁殿、そなたは今俺に斬られても文句は言えない状況下にあると、理解出来ておらぬのか?」
「下りたら罰でもくだるのか? そうは書いていなかったはずだが。下りるなら、覚悟をしておけ。とな」
「三日月! そんないけ好かぬ男!! いっそ見せしめで殺してしまえ!!」
三日月の審神者がそう叫ぶ。
「主もああ言っている。今後のために、斬らせてもらうとしよう」
ゆらりと刀を握り直し、重症の山姥切を抱く理仁へ向けて刀を振り上げた。
「悪く思うなよ、人の子」
……――刀が振り下ろされる。
「理仁……――ッ!!」
会場の方で、彰人の声だけが響き渡った。
だが、三日月の想像通りの未来は訪れなかった。――銃声が突如響く。
「……そなた……っ」
三日月が目にしたのは、白銀色の銃を構えている理仁の姿だった。銃口は煙を上げ、発砲したことを告げていた。三日月の刃は、何か重たい衝撃を受け軌道を逸らされてしまい、理仁達の横を斬り裂いただけだった。
「悪いな。俺も、考えなしに審神者をやっているわけじゃないんだ」
理仁は不敵な笑みを見せ、引き金に指を添えたまま好戦的に銃口を三日月に向けた。