第4章 stormy
「俺は……」
ぎゅっと柄を握って、山姥切は真っ直ぐに三日月を捉える。迷いなどとっくになかった、目的はただ一つ。それが正解なのか、彼にはまだわからないだろう。それでもやると決めたからには、最後まで貫く意思くらいはあった。
「俺は偽物なんかじゃない……ッ!!」
岩融との稽古を思い出す。強い相手と対峙した時、何をどうすれば相手の懐に飛び込むことが出来るのか。身体にしっかりと染みついている、戦いの記憶。小手先だけでも今は構わない、今はまだ付け焼刃でも。いつか……本物となる日まで。
瞬時に動きを変えた。
「何……っ!? そなた……ッ」
三日月が驚きで一瞬隙を見せる、上手く懐に飛び込んだ山姥切は躊躇うことなく刀を振り上げた。低い唸り声を轟かせて、山姥切が振り上げた一閃は確かにあの天下五剣、三日月宗近に届いた。
空気が重くなる、風の向きが変わる。
その光景を息を飲み見つめていた者達は、言葉を失いただ戦況を見守るのみ。
三日月の姿は、大きく傷を負い中傷まで追い込んでいた。
「熱いな、本気になるか」
これも実力の差か。三日月の剣筋を、山姥切に見通すほどの力は備わっていなかった。三日月の刃が容赦なく山姥切に襲い掛かり、鮮やかな赤が宙を舞う。
「勝負あり!」
役人の声が響き渡る。声と共に、その場へと理仁は下りて山姥切の元へと駆け寄った。