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刀剣乱舞 盤上のクロッカス

第4章 stormy



「そう食ってかかるな。いいか、最も大切なことを教えておく。相手は俺達のことを、完全に舐めきっている。レベルにばかり気を取られ、肝心な中身を見通す能力がないらしい」

「だからなんだ……」

「俺は稽古をつけている間、散々告げたつもりだが? 忘れたか?」

「忘れてないさ……! だからそれがどうした!!」

「ならば稽古の時の同じことを問おう。お前達は"勝つ"つもりでいるのか? それとも、相手を"破壊"するつもりでいるのか? どっちだ」

「……!」


 理仁の言葉に誰もが何も言えず黙り込む。山姥切も、ゆるゆると手を離す。演練において、そんなことを言われるとは思っていなかったという顔だ。けれど理仁の表情は、冗談ではないと言いたげに険しい。


「勝敗は結局のところ、結果に過ぎない。そこに拘るな、大切なのは相手をどう戦闘不能にするか。生憎うちは、新人とはいえ様々な種類の刀剣が揃っている。役割分担をしよう」


 理仁は机の上に相手の部隊表を広げると、ちょいちょいと皆を呼んだ。全員理仁の元へ集まり、真剣に覗き込む。一人一人の表情を確認して、理仁は満足げに表の中にある三日月の名を指差して告げた。


「俺達が奇跡的に勝てる方法があるとすれば、こいつが鍵だ」


 新人だからと舐められていては困る。理仁は持ち前の得意分野を駆使して、作戦を立てしっかりと刀剣達に伝えていく。どんどん濃くなる戦略に、いつの間にか一致団結しそれぞれも意見を出し合い詰めていく。岩融も意見に参加し、皆真剣な眼差しを理仁に向けた。


「あんた、本当にやる気か……?」


 確認するように、山姥切が理仁に声をかけた。


「当たり前だろう? 俺の刀剣を馬鹿にしたんだ。――……これくらいしてやらないとな」


 初めて理仁の瞳に、赤い焔が灯っている気がした。理仁にしては珍しい好戦的な表情に、山姥切は思わず目で追ってしまう。

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