第4章 stormy
「俺の"国広"に、触れないでくれ」
「お……? なんだ。理仁も案外、ちゃんと人の子だな」
「どういう意味だ馬鹿野郎」
「いや、お前が問題なく審神者やってるみたいでよかったってことだよ」
「柄にも心配してくれたのか? てっきり俺は泣きながら現世に逃げ帰ったと思ってた」
「お前は俺をどんな奴だと思ってんだよ!!」
他愛もない会話。けれど、知っている人がただそこにいる安心感。理仁は安堵したように、笑みを向けた。傍ら控えていた山姥切へと視線を向けてみれば、俯いたまま。
「……? 山姥切、どうした?」
顔を覗き込めば、驚くほど顔が赤かった。
「え、お前どうし……」
「そんな風に俺を、呼ぶな……っ」
顔を隠してそそくさと後ろへと下がってしまった。なんだ? あいつ。理仁が瞬きをしている中、彰人は「やれやれ」と苦笑いを浮かべた。
すると、どこからともなく理仁達に向けられているであろう、下品な笑い声が聞こえて来た。近付く気配に、理仁も彰人も顔をしかめた。
「はっはっはっ! 新人が一人前に、審神者気取りか! こりゃ笑える!! あっはっはっ!」
「てめぇ、誰だ」
彰人はきつく睨み、今にも飛びかからんとしていた。
「彰人様、おやめ下さい」
「てめぇは黙ってろ長谷部! これは俺と、このおっさんの問題だ」
「しかし……っ」
「彰人、自分の刀剣を脅すな」
理仁が軽く彰人の頬をぶん殴った。それも容赦なく。彰人は頬を押さえて理仁に飛びかかりそうになるが、今度こそそれを長谷部が止めた。