第4章 stormy
「けれど、姉さんは死んだ。政府は、事故だと言った」
「事故……? どういうことだ」
「神隠しに遭った。審神者にはよくあることらしいが、審神者なんてものに興味もなかったし知りもしなかった俺には関係のないことだった。何が神隠しだ、笑わせるなと……。でも事実、姉さんは俺の前から消えた。跡形もなく」
「どうしてあんたは、審神者になったんだ?」
理仁はふっと、自嘲気味に微笑んだ。
「どうしてだと思う?」
その答えは、いつか聞けるのだろうか?
失ったものの大切さ、尊さ。それを知ることができるのは、やはり当人だけだろう。一度失ったものは元には戻らない。どんなに綺麗な思い出に浸れても、悲しい過去を憎んでも、あの日々は過ぎ去ったまま通り過ぎて巻き戻されることはない。
もしも、もしも彼が"もう一度"と望んでしまったとしたら?
その先にあるのは、身体も心も魂さえも呑み込んでしまうほどの、闇だけだろう。
大演練会、当日。練度の高い岩融の助けも相まって、新人同然の理仁と刀剣達は何とかそれなりの力を備えることが出来た。と言っても、ほとんど付け焼刃に過ぎないかもしれないが。
「準備は出来ましたか? 宝条様!」
全員、大広間にて集まっていた。会場まで転送してくれるのは、こんのすけの役割だった。
「ああ、俺は大丈夫だ。お前達はいけるか?」
それぞれの顔を眺めて、頷く姿に大丈夫そうだということだけは理解出来た。ふと、昨夜のことを思い出して理仁は山姥切へと視線を向けた。一瞬目が合うが、何故かすぐに逸らされてしまった。照れたのか? と思うことにした。