第4章 stormy
「だいたいそんな長々と語るほどの理由はないぞ!」
「その程度ということだろう? いいからお家へ帰れ」
「……っ、俺はお飾りでいるのに飽いたのだ! 理仁よ!!」
岩融の言葉は、先程よりも重く響いた。あまりの気迫に、和泉守が引くくらいだ。理仁は腕を組むと、まるで岩融を試すかのような言葉を口にする。
「お前がその薙刀を振るうのは、何のためだ? 飾りでいたくないからか? 何かを斬りたいからか?」
「俺は……っ、俺は薙刀だ。確かに元はただの物、人の姿も心さえもない。だが今は違う! 俺は……」
「お前は薙刀なのか? それとも……刀剣薙刀"岩融"なのか?」
「……っ」
岩融はごくりと唾を飲んだ。理仁の言葉は、凛と張りつめて空気に溶けず鋭くこの場にいる者達へと入り込んでいく。岩融は大きく深呼吸をすると、少しだけ緊張した様子でけれどはっきりと答えた。
「俺は刀剣薙刀……名を岩融!! お前さんを審神者と見込んで、お願いに参った」
「ああ、聞こう」
「俺は審神者の名家、佐伯家の一振り。だがその跡取り、審神者になることを拒絶し現在は政府に身を置いている。この先あの男が審神者になる可能性は低い、そんな時にあの男と共にいたお前さんを知った。初めて、血が沸騰する思いをした」
「それは何故だ?」
「わかったからだ。お前さんには、他の審神者とは違う最も濃くて明確な目的を持っていると。俺の目には映った、その瞳の裏側に隠した獣。お前さんとなら、俺の目的も果たせるやもしれん」
「お前の目的とは、なんだ?」
「俺の目的は……今度こそと、願った未来を薙ぎ払い切り開くこと」
「……そうか」
理仁は先程まで向けていた冷たい空気を払い、岩融へと手を差し出した。この状況に未だついていけてないのは、和泉守だけだった。