第4章 stormy
大男、岩融。どこの刀剣なのか、素性もまったくわからない。和泉守は警戒をけして緩めない、こんなわけのわからない相手の話を聞く必要などないだろう。とは思うが……理仁が和泉守の手を掴んだことにより状況は変化する。
「刀を下ろせ、和泉守」
「主! でもこいつは……っ」
「俺の刀剣になりたい理由を、五百文字以上で三分以内に述べられたら許可する」
「あ……?」
理仁は腕時計を見つめて、既に計測を始めていた。和泉守は「は?」という顔で理仁を見ていた。岩融の方は、ぽかんと大口を開けて必死に状況を把握しようとしている。そんなことをしている間に、刻々と時間は過ぎていく。
「一分過ぎたぞ」
「何!? えっと……だな……、俺はその……最近暇でな! いや、とある審神者の名家に仕えている刀剣なのだが、そこの跡取りがなんでも審神者にはならないと頑なに拒否してしまってな。そいつに仕えるはずだった俺は、強制的に暇というわけだ」
「二分」
「しかもそいつは政府で働くことになり、審神者にはけしてならないを条件にしてだ。ますます俺の活躍の場がない! 困る!! 俺のこの薙刀は振るうためにある! というわけで、近頃の審神者を監視していたところお前さんを見つけたというわけだ!」
「三分。無駄な時間を過ごしたな、門を直して帰れ。いくぞ、和泉守」
「え、いいのか?」
「おいおいおいちょっと待て!!!」
理仁が立ち去ろうとすると、道を阻むようにその大きな図体で目の前に立ちはだかる。理仁は「何か問題が?」と言いたげな冷静な表情で、ただ岩融を見上げていた。