第2章 conspiracy
「朝から何をしてるんですか! 騒がしい!!」
「「今取り込み中だ! 黙っていろ!!」」
「……ハイ」
ぱっと理仁が手を離せば、山姥切は掴まれていた腕を摩った。逃げる様子はない。だから理仁はそのまま彼の言葉を待った。異様な空気に、こんのすけは一目散に逃げていったのを視界の端で見届けた。
「……あんたはどうして、審神者になったんだ」
「俺には目的がある。ただそれだけのことだ」
「その目的とは、なんだ」
「俺と共に、戦ってくれる気にでもなったのか」
「違う! ただ……知りたくなっただけだ」
「そうか。俺に、興味を持ったんだな」
興味を持つということは、受け入れようとする心がある証拠の一つでもある。まったく興味がなければ、相手のことなどどうでもいいだろうし近付こうとも思わないだろう。けれど彼は、口では拒絶を強く見せるがこうして理仁の前に姿を見せて、理仁について問いかけ始めている。
彼の中で、どんな変化が起こったのかはわからないが、どんな理由だとしても理仁はどちらでもいいと思った。
「知りたいか? 俺がどんな目的で審神者になったのか」
「……知り、たい」
山姥切がそこまで口にすると、理仁はふっと笑みを作る。何が可笑しい? という具合に睨み付ける山姥切に対して、嬉しそうに言葉を紡いだ。
「知りたければ、俺と共に来い。いつか、わかる」
手を差し伸べれば、山姥切はきょとんとした目をして瞬きを繰り返した。振り払うことは自由だろう。別に強制されているわけではない。本当に嫌なら、断ってしまえばいい。そう、本当に嫌ならば。
記憶が残っているせいで、余計なことばかりが見えてしまう。審神者が纏う空気、霊力。瞬時に感じ取っていた山姥切は、理仁を包み込む冷たく深い何かに気付いていた。それが自らが持つものとは違うものだとすぐにわかったが、どうにもわからない。