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刀剣乱舞 盤上のクロッカス

第12章 crocus





 大きな荷物を抱えて踏んだ地は、もう見慣れ始めていた理仁の帰るべき場所――本丸だった。門へと近付けば、嬉しいことに全員が揃いも揃って理仁を出迎えてくれていた。


「主さん! おかえりなさいっ」

「おう、おかえり……」

「主殿、お待ちしておりましたよ」

「うん! すっごい待ってた!!」

「うんうん、良い顔だね。まるで憑き物が落ちたような顔をしている」

「がははっ! やはりお前さんには、そうして堂々としてもらいたいものだ!」


 和泉守、堀川、一期、乱、石切丸、岩融と一人ずつ理仁へと声をかけていく。ただ一人を除いては。


「ん、ただいま皆。それから……国広も」

「あ、ああ……」


 他の刀剣達は、何やら空気を読んだのか静かにその場を離れ始めた。理仁は気に留める様子もなく、胸を張って山姥切へと真正面から向き合う。心地よい風が吹き抜ける。理仁は一度鞄を足元に置くと、無言で両手を広げた。

 その意味を、山姥切は理解する。わかった上で、その腕の中へと躊躇うことなく飛び込んだ。


「おかえり……理仁」

「ん、ただいま」


 ぎゅっと抱き締め合えば、目の前にいる互いが嘘でないことくらいすぐにわかる。理仁は心底安堵した表情で、ぽんぽんっと山姥切の背を叩いてはぽつりと話し始めた。


「よく、ここまで俺と一緒に歩んでくれたな。本当にありがとう……」

「はっ……何を今更。俺はあんたの、初期刀で近侍だからな……当然だろう」

「お前と出会って、俺は……誰かが傍にいてくれる幸せをもう一度知ることが出来た。こんなにも温かくて、尊いものだと……姉さんを失った日から俺は、その全てを失ったんだ」

「……」

「ありがとう。お前がいてくれて、俺は幸せだよ」


 心からの理仁の言葉だった。一人で走り続けて来たつもりだった、そう途中までは。審神者になった彼は、姉のことばかり考え本当の意味で彼らを見ようとはしていなかった。けれど少しずつ心は移り変わり、誰かのために彼らのために自分が動き始めていることに気付く。

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