第12章 crocus
「理仁、あんたは俺達の主だ。指示を頼む」
「主殿と共に、最良の結果を」
「無理に破壊する必要はない。いいか? 生き残ることを優先しろ、適当に薙ぎ払って階段まで一気に走れッ!!」
理仁の声を合図に、彼らは一斉に地を蹴り駆け出した。先が見えないほどの敵の中へと飛び込むと、理仁が銃で牽制をかけ山姥切と一期が近くの敵を斬り捨て道を切り開く。敵の攻撃は、短刀、太刀、大太刀と種類はそれぞれ。
その全てを受け流すことも難しく、細かい傷を負いながらも足を止めることなく走り続ける。
「理仁っ! これじゃあきりがないぞ!!」
「全部の相手をしようとするなっ! とにかく階段を目指せ!!」
「二人共!! 前方に階段を確認っ、そのまま真っ直ぐですッ!」
一期の言葉に耳を傾け、理仁と山姥切は前方を見つめる。確かな目標を確認し終えると、力いっぱい刀を振るい銃声が後押しする。無理だとか、無茶だとかそんなもの今の彼らの中にはあるはずもなかった。
――全員で生き残る。
その決意だけを胸に秘め、血を流しそれぞれが武器を手離すことなくただひたすら進んだ。
傷だらけの身体を引きずり、ようやく階段に到着した。先に階段を踏みしめた理仁は、二人へと振り返り声をかける。
「そいつらはもういい! こっちに来いっ!!」
「……ッ!? 理仁っ、危ない後ろだ!!」
「……っ」
理仁が慌てて振り返った先には、階段から黒い瘴気に包まれた槍の歴史修正者の姿が……――振り下ろされる槍を見つめながら、理仁は覚悟を決めた――その時だった。
「斬って殺すは……」
「お手の物っ!!」
敵の背後から現れた二つの劔。理仁の瞳には、無残に崩れ落ち沈黙する敵槍の姿。敵が目の前から消えたと同時に、二つの影を見る。