第12章 crocus
「なぁ、国広。俺の怪我は……一体」
「……悪いことだとは思った、けどこれ以外理仁を助ける方法が見つからなかった。あんたの傷が癒えたのは、俺の神気を流し込んだから一時的に自然治癒力が向上しているんだ。ただその場凌ぎだから、すぐに手当てが必要だ」
「そうか……俺を助けるために……。ありがとな? 国広」
――途端、大きく建物が揺れ始めていた。異常な揺れに、理仁と山姥切は同時に顔を見合わせた。
「理仁、一期達が何処にいるかはわかるか?」
「いや……流石の俺にも」
「主殿!! ご無事ですかっ!?」
騒がしい音と共に飛び込んできたのは、まさしく一期一振だった。砂埃で服は汚れているものの、怪我をしている様子はなかった。
「一期、無事だったか。ああ、俺も大丈夫だ」
「大丈夫ですと……? まったく大丈夫には見えないのですが!?」
一期は理仁へと慌てて駆け寄る。あまりに一期が切羽詰まったような顔で近付くものだから、理仁は思わず苦笑いを浮かべるのだった。
再び大きな揺れが、理仁達を襲う……! まるで、この建物で戦争でも起きているのではないかと、そう疑ってしまうような壮絶な音が響き始める。主に上の階から聞こえているが、この地下室を揺るがすほどの衝撃だ。ただの地震などでもないだろう。
「……俺はまだこの現状を理解できていない、だからお前達が持つ情報を俺に全てくれ。一体俺の意識がない間、何があった?」
「はい、私の方では主殿と引き離されてから三日月殿と一緒に、牢に閉じ込められておりました。しかし、途中三日月殿に何らかの術を使われたのか……意識を手離し気が付けば牢は開いており、三日月殿の姿は最早ありませんでした」
「……俺は三日月に会ったぞ。理仁の姉を、主と呼んで身体を抱き上げて何処かに消えた。共に消えると、そう言っていた」
「そうか……あいつ、姉さんの近侍だったんだな」
理仁の表情は何処か寂しそうに、けれど少し晴れやかにも見えた。三人は立ち上がると、改めてこの惨状を目に焼き付ける。