第11章 memory
「その姿はなんだ、国広。答えてみろ……っ」
理仁は不愉快そうにじりじりと焼け付くような視線で、彼を睨むが……。
「そうか、それがあの男の目的か。はぁ……どうしようもないな、俺もお前も」
山姥切の目の前まで来ると、理仁は未だ荒い呼吸を繰り返しながら項垂れる。そして、何かを吹っ切ったかのように笑い始めた。
「……ははっ、あはは……っ。お前の闇、見たよ。あんなになるまで、抱えていたなんてな……正直知らなかったし、知ろうとも思わなかった。俺は結局……はぁ、自分のことしか考えていなかった」
「……ウ、ググ……ッ」
「泣いてるお前を見て、泣かせたくないなと思った。馬鹿だろう? どうしてこの俺が、お前のために必死にならなくちゃいけないのか……。ああ、うん。答えならもう出ているんだ」
理仁はライフルを構えると、山姥切の心臓へと突き付ける。引き金に手を添えたまま、今にも引いてしまいそうな剣幕だ。自我を失っている山姥切には、脅しにもならずライフルを掴んでくる。
「お前をこんな風にしたのは、俺なのだろうな。悪い。悪かった。でもお前をここに連れてくるわけには行かなかった。いいか? 俺はな……」
掴まれたライフルは理仁の気力が切れたのか、すぐに奪われてしまった。山姥切は理仁の真似をするように引き金に手をかけた。
「国広が好きなんだ。大切…なんだ。失いたく、なかったから」
銃口は理仁の肩口にあてられ、無情にも――引き金は引かれた。
銃声と共に理仁の身体は完全に床へと投げ出される。重たい音がした。どんっと床に身体を叩きつけて、理仁はぴくりとも動かない。
「あ……」
ライフルが山姥切の手を離れる。同時に、彼の足は真っ直ぐに理仁の元へと駆け出した。酷く青白く、生気の失った理仁の顔を覗き込んで山姥切は理仁に駆け寄る。