第11章 memory
「あんたは俺を許してくれるのか」
「……許す? 何から」
「俺、あんたがいい。あんたが欲しい。その代わりに、この痛みをここに捨てていく。あんたの言う通り責めるのを全部やめて空っぽになる。それから、それから……あんたを、アンタヲ」
「国広……?」
「アンタガ手二入ルナラ、他二何モイラナイ」
国広は驚くほどの力で俺を押し倒すと、俺の首に手をかけてぐっと力を込めて絞め上げた。それにより、俺は呼吸を阻まれ息苦しさで眉間に皺を寄せた。辛うじて見えた国広の顔は、悲痛に歪んで何かに怯えているように見えた。
「お前は……っ、何に……怯えている、んだ……ッ」
俺もお前も似たようなものだな。ああそうだ、最初にこいつと出会った時に思ったことだ。こいつの前の主の話を聞いて、改めてそう思ったんだ。俺と国広は似ている。だから……――わかることもある。
「アンタガイナイ世界ナライラナイ!! イラナイ……ッ」
「はっ……ぐっ、ふざ……ける、なっ!!」
傷が痛む、気持ち悪いくらい血が溢れ出すような感覚がダイレクトに身体に伝わる。俺は渾身の力を込めて、国広の手を引き剥がすとそのまま背負い投げを決める。懐から銃を取り出すと、国広に馬乗りになり、額に突き付けてやる。
「はぁ、はぁ……っ! お前そんなことっ、本気で思ってるのか!!」
「……ッ」
「本気で思っているのなら、このまま死ね!!」
生きてやる、生き延びてやる。
「俺がずっとお前の主でいてやるから、世界の事は我慢しろ馬鹿野郎っ!!」
俺は銃を投げ出すと、こいつの綺麗な顔に思い切り拳を食いこませた。ああもう、本当に……どうしようもない奴だな。
「国広……。わかったらなんて答えるんだ? 言ってみろ」
俺の意識は、そこで途切れた。