第11章 memory
「主は……鬼だった。鬼だったんだ!! 何人もの仲間が死んだ、殺された。俺は、俺は必死だったんだ!!! 死にたくなかった、怖かった……こわ、かったんだ……」
「……うん、そうか」
「俺が殺さなきゃいけなかったんだッ!!」
こいつ、一体どんなものを抱えて俺の元へ顕現されたのか。ふとそんなことを考えてしまった。ただわかったのは、今俺が抱き締めている国広はたぶん……。俺と普段一緒にいる国広が最も隠したいはずの、過去だ。過去の闇だ。
「ああそうか、そうだったんだな」
「でも……でもでもでもっ、殺した後に俺は見てしまったんだ。主が……ありがとうって、微笑んでいたのを。俺は、俺はなんて……こと……をっ」
「お前のせいじゃない、なんて言うと安っぽく聞こえてしまうだろうな。そうだな……その時はきっと、それしか方法がなかったんだ。そもそも、全てを救うことなんて人にも神にだって出来ない。誰かが犠牲となり、その上に救いがある」
無数の死体の山。その上には生者しか立てない。全て救うだとか、救えるなんてものは単なる偽善だ傲慢だ。だから俺はそんなものいらない、ただ一つこの手で救えればいい。一番大切なものを。
「お前は生きたかった、どうしても生きたかった。仲間の死、自分の死、主の死。お前は主の死と引き換えに、自分を救って仲間も救った。それでいいじゃないか。殺したとか、そういうんじゃない。自己防衛だった、だからそう責めるな」
こんな下手くそな慰めがあったもんかと、自嘲した。けれど、突然国広の泣き声がぴたりと止んだ。落ち着いたのか? そう思い、国広の顔を覗き込めば虚ろな瞳で俺を見つめていた。