第11章 memory
「一体俺に、何をさせるつもりなんですか。俺は審神者じゃない、審神者になる気もない。姉さんの後を継ぐなんて綺麗ごとは言わないし思いもしない」
「俺がこんなことを言うのもおかしいが……まぁ、戯言だと思って聞いてくれ。君の姉が死んだのは、事故なんかじゃない」
「……」
「上層部は君の姉を心底気に入っていた。だが、その執着は異常そのものだった。愛情なんかじゃない、あれは……あれは……玩具を手に入れた子供のようだった」
ならば姉さんの死の原因は政府だとでも言うのか? そんなことを、政府の人間が安易に口にしていいものなのか。どうしても俺に、審神者をやらせたくてたきつけているのか。どちらにしても、確かに俺も政府が事故で死んだと手紙を寄越した時点で、おかしいとは思った。
事故? あんなにも、姉さんの身の安全は保障すると言っておきながら? 俺は納得できなかった。すぐに納得できるほど大人にはなれなかったんだ。
暫くして、身内だけの葬式が行われた。姉さんは美しいものが好きだった、大好きだった。だから俺は綺麗な教会を選んだ。姉さんのために、姉さんが安心して眠れるように。
俺は慣れないスーツを着て、姉さんが眠る棺桶の前へとやってきた。
「おやすみなさい」
それ以上の言葉は出てこなかった。どうして死んだんだ、どうして一度も会いに来なかったんだ、どうして俺に何もさせてくれなかったんだ。様々な思いが体内を巡回して、血は沸騰して徐々に怒りが込み上げてくる。まるでそれを誤魔化すように、姉さんに白い花を捧げて教会を後にした。