第11章 memory
「ねぇ、××。お姉ちゃんね、審神者になるの。時の政府ってところに行ってね、歴史を修正しようとしてる悪い人を倒すお仕事をしてくるの。だからごめんね、寂しくなると思うけど××はもう子供じゃないから、大丈夫よね? 全部お姉ちゃんに任せてね。もう何も怖いことなんてないよ」
姉さんはわかっていなかった。俺が一体、この世で一番何を怖いと思っているのかを。そして俺もまた、姉さんがこの先どうなるのかさえ知らずにいた。
世間から見たら、俺の境遇は所謂「可哀想」の部類に入るのだろう。両親は物心ついた時に死去。姉さんとの二人暮らしとなった。親戚とは元々縁を切っていたせいで、両親が僅かに残した貯金と姉さんの必死の稼ぎもあって辛うじて生活していた。
しかし現実問題、俺は高校生になり学費が想像以上にかかり姉さんが苦悩していたのを知っていた。だからアルバイトなり、最悪学校をやめるなりの覚悟をした。それを姉さんにも告げた。
けれど、姉さんは俺のその申し出を強く断った。「学生の本分は勉学なのっ!」その一点張りだ。
かと言って現実はそんなに甘くない。いつの間にか姉さんは家を空けることが増え、俺は心配していた。一人追い詰められた姉さんが、どうか恐ろしい魔の手に捕まりませんようにと。俺は無力だった、何も出来なかった。せめて勉学に励むことで、姉さんに何か返せればと俺なりに必死だった。
――そんな、ぎりぎりの生活をしていた時だった。