第10章 god
「……声が聞こえたっ、理仁の声が……!」
門へ到着すれば、佐伯が丁度ゲートを完成させたところだった。血相掻いて走って来た山姥切に、佐伯は驚いたように声をかけた。
「どうかしましたか? 山姥切さん」
「早く理仁の元へ向かわせてくれ!!」
「山姥切さん……?」
「声が聞こえた、あいつの……声が」
――助けてくれって言ったら……お前は……来て、くれるのかな……
薄らと、けれど微かに聞こえてくる声に山姥切はぎゅっと胸元を掴んだ。この感覚はなんだ、今までに感じたことのないような、強い焦燥感。
「……なるほど、貴方は彼の近侍ですからね。声が届くのかもしれません」
「……ッ」
「ですが慌てないで下さい。このゲートは通常の出陣の時に使うものとは異なり、とても特殊です。審神者の力を借りる必要があります」
そう言い終わる頃には、彰人が追い付いてきた。到着するとすぐに彰人は思い切り山姥切の頭をぶん殴った。
「いてっ!!!」
「お前なぁ! いきなり走り出すんじゃねぇよ、びっくりするだろうが! やんのかごらぁっ!」
「……やめなさい彰人君。山姥切さんが痛みで蹲っているじゃないですか、可哀想に」
「しょうがねぇだろ! 俺は人間なんだから、こいつらの早さに着いていけないんだよ! あ、で……ゲート出来た?」
「出来ましたよ。このゲートを無事に潜り抜けるためには審神者、つまり彰人君の協力が不可欠。山姥切さん、大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃ……ない」
山姥切は目尻に涙を浮かべ、蹲りながら彰人を睨み付けた。彰人は何故か勝ち誇った顔をして、胸を張っている。無性に腹が立ったので、山姥切は彰人の靴に砂をかけておいた。だが光の速さで長谷部が彰人の靴を綺麗にしてしまった。