第10章 god
「その様子だと、未だ戻って来ていないようですね」
「何の話だ」
「単刀直入に申し上げます。宝条さんは、俺が座標をお調べした結果……政府上層部にて拘束されている模様です」
「どうしてそんなことをあんたが知っている!? 俺を罠にかけようという魂胆か!? それに、俺が乗るとでも?」
「信じなくても構いません。まぁ、信じて頂けるようとある人物を共に連れて来ました。彰人君」
佐伯が"彰人"と名を呼べば、気だるげに頭を掻きながら黒髪黒曜石の瞳の男が、佐伯の背後からのっそり現れた。その男に、山姥切は見覚えがあった。
「あんた……っ、演練の時理仁と話していた……」
「おう、覚えてたか山姥切。ったくよ、理仁は何処に行っても嫌な大人に目を付けられるな。やっぱ俺がいなきゃ始まんねぇなこりゃ」
彰人はにししと笑った。そんな彰人の背後には、息を殺し気配を消すように傍らに控えているへし切長谷部の姿があった。
「改めて山姥切さんに申し上げます。宝条さんは現在政府上層部特別異空間にて、拘束されています。その他に一期一振、三日月宗近の気配を感じますが詳細は不明。以上が、俺が調べて掴んだ現状の彼の身に起きていることです」
「三日月……? どうしてその刀剣が、理仁の近くに」
「それは俺にもわかりません。ただ、一期さんと近い場所にいるようなので何らかの理由で関わり共に拘束されている可能性がありますね。確か三日月宗近はまだ宝条さんは手に入れていませんね?」
「ああ……そのはずだ」
「となると、他本丸の刀剣の可能性も。何にしても、上層部は謎が多いので特定が出来ません」
彰人が一歩、山姥切の方へと踏み込む。