第9章 hell
「俺達付喪神は、人間の玩具などではない! 貴様のような強欲な人間がいるから、誰かが悲しむ、嘆く、そして新たな憎しみと戦が起きる!!」
「私達はそんなことのために、刀剣男子になったのではない! 私達は……ただ一人、信じた主の進むべき道を切り開く」
「「一振りの刀!!」」
三日月と一期が声を重ね、最後の弾丸を切り裂いた。銃撃のせいで、辺りは一気に砂埃が舞い視界は悪くなる。
「理仁殿、俺の魂そなたに預けよう」
「主殿。私の魂、何処までも貴方と共に」
「……悪い。援護を頼むっ!」
理仁が駆け出そうとした……――その瞬間。
「……姉……さん?」
胸に激痛が走る。理仁が視線を落とせば、自らの胸に黒い刃が突き刺さり身体を貫いている。後ろを向けば、先程まで眠っていたはずの女がまるで亡霊のように立ち、刀を握っていた。その刃は、理仁の身体を貫いた。
ずるっと嫌な音を立て、刃が抜かれたと同時に理仁はその場に倒れ込む。
「理仁殿!」
「主殿!!」
同時に武装集団がその隙を得て、三日月と一期を一斉に取り押さえた。流石の二人も何人もの人間に押さえ付けられれば身動きが出来ない。
「理仁殿逃げろっ!!」
「主殿、俺達を見捨ててお逃げ下さい!!」
「……っ、熱い……ッ」
その場に蹲り、理仁は銃を離さぬよう握り締めたまま、空いた手で傷口を抑えた。おびただしい量の血が流れ、手を一瞬でどろりと汚していく。息をするのも辛い、苦しい。痛いというよりも、引き裂かれるような激痛が理仁を襲う。