第9章 hell
「理仁君、君は本当に面白いな。真実を知ってなお、その心は壊れない。素晴らしいっ!」
気味の悪い拍手と共に、背後に武装集団を引きつれた先程の政府の男が顔を見せた。三日月と一期が臨戦態勢に入る中、ようやく理仁もゆらりと立ち上がった。
「姉さんは……一体ここで、何をしているんだ」
「先程も言っただろう? 彼女は我々の導きの元、一人の刀剣と共に闇落ちをした。が……刀剣の方は、落ち切らなかった。その刀剣は私達の企みに気付いていた、だから神気を使って寸前で闇落ちを防いだ。しかし……一人闇落ちした理仁君の姉は、どうして一緒に堕ちてくれないのかと嘆いた」
「……」
「審神者だけの闇落ちだけでは不完全だ!! ならばと荒魂を食わせることで、荒神化計画が実行された」
男は楽しそうに語る。理仁は憎しみを込めた瞳で男を睨み付けると、銃口を向けた。勿論同時に、男の後ろに控えていた武装集団の銃口も理仁へと向けられる。
「理仁君、歴史修正者とはね……神のなれの果てなのだよ」
「なれの果て……」
「人と付喪神が闇落ちして魂を融合させて出来上がる、反逆神だ!! あっはははっ! そして私は荒神と共に、私だけの楽園を創造する神になるんだ!!」
「狂ってる!! そんなくだらないもののために、姉さんを……それだけじゃない。他の審神者達までも!」
「私だけの楽園を作って何が悪い!! 私は今まで、時のため歴史のため頑張って来たんだ。少しくらい贅沢したっていいだろうがッ!」
男が合図を出せば、一斉に武装集団の銃撃が開始された。三日月と一期は瞬時に理仁の傍に寄ると、剣術で次々に正確に玉を弾く。理仁も応戦するかのように、引き金を引いた。