第2章 conspiracy
「何をそんなに怯えている?」
理仁がそう問えば、山姥切の表情が崩れる。
「怯える……? この俺が? 俺は刀剣で……あんたはただの人間だ。俺がその気になれば、いつでもあんたを殺せる!!」
抜刀した山姥切は、切っ先を容赦なく理仁へと突き付けた。それでも顔色一つ変えない理仁に、心なしか山姥切は動揺しているように見えた。何故臆さないのか、怖がらないのか。少しだけ、柄を握る手が震えていた。
理仁がそのまま立ち上がると、びくりと山姥切は肩を揺らす。
「俺を殺しても、代わりはいくらでもやってくる。俺は結局、レプリカなのかもしれない」
「れぷ……?」
「お前の言葉に置き換えれば、写しということだ。俺は所詮本職である審神者の写しに過ぎないだろう、俺の代わりはいくらでもいるし俺でなければいけない理由も特別ない。そんな俺を殺しても、お前の中にある暗闇はけして晴れない」
「……写し……」
ふっと理仁が笑うと、山姥切は思い切り目を逸らしてしまう。
「別にだからと言って、お前と同じだと豪語するつもりはない。俺とお前は同じではないし、それは失礼だろう」
「わからない……。俺はあんたみたいな人間を、知らない」
「知らないなら知ればいい。刀の時には得ることが出来なかった膨大な知識を、今はその立派な手足と脳で得ることが出来る。知りたければ求めろ、そして掴み取れ。お前には、その権利があるのだから」
それだけ告げると、理仁は一歩下がって立ち去っていく。突き付けたはずの刃は、理仁を傷付けることはなかった。
「納得できない……それだけじゃ」
山姥切は静かに腕を下ろして、俯いた。物置部屋へと引きこもろうとした山姥切だったが、理仁の口から出たとある言葉を思い出してしまい、足を止めてしまう。