第9章 hell
「主殿……」
「絶対国広にはいうなよ、絶対だぞ」
暫くそうしていると、もう平気になったのか三日月の方から理仁の元を離れた。
「はっはっ、すまなかったな。少し力が戻った」
「……聞きたいことがある。お前はどうしてここにいる? お前の主はどうした? そしてここは一体何の研究施設だ」
「ふむ、俺は爺だからな。詳しい事はよくわからん。だが……主ならとっくに死んだ」
「死んだ?」
「政府のお偉いさん、とやらに捕虜にされ俺も共にここへ監禁された。暫くして主だけ引きずり出され、気味の悪い人体実験の餌食になった。目の前で頭を食われておった」
「よく覚えてるな」
三日月は袖で口元を隠すと、控えめに笑った。主に対しての興味は、既にないようだ。演練の時にもあったかは不明だが。わりとどうでもいい、他人事だと言わんばかりの言葉に聞こえた。
「俺はこの扉に特殊な術で縛り付けられ、門番とやらをしておった。ある一定の霊力を持つ審神者でしか、破ることはできない。理仁殿が来てくれて本当によかった」
「お前を助けに来たわけじゃない。それより、俺の最後の質問に答えろ」
「ここは見てわかるように、人体実験を行っている施設というらしい。政府は使い捨てのいらなくなった審神者の魂を集め、人工的に荒魂へと変換して彼女に食わせていると言っていた」
「言っていた?」
理仁が怪訝そうに尋ねれば、三日月は「ああそうだ」と返事をするのだった。何故三日月はそこまでの重要であろう内容を、政府から聞かされているのだろうか? 普通は何も教えず、何も知らせずそのまま縛り付ければいいのではないだろうか?