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刀剣乱舞 盤上のクロッカス

第9章 hell



「三日月……宗近」


 理仁の声を聞けば、三日月はゆっくりと瞼を開けた。瞳の中には確かに打ち除けの月を携え、理仁を捉えるとにっこりと微笑んだ。


「やあ、久しいではないか……理仁殿」

「……っ、お前! あの時演練で戦った、三日月なのか?」

「……いかにも。いやはや、いつまでも眠りから目覚めることが出来ぬと思っていたら、審神者の言霊でしか起きられぬよう術をかけられていたとは。はあ、三日月宗近の名が泣くな」

「お前を助けるためには、どうすればいい?」

「手を、貸してくれぬか?」


 理仁は扉へと近付くと、こちらへと手を伸ばす三日月の手を躊躇うことなく取った。すると、驚くほどするりと三日月の拘束が消えると……ふわりと理仁の胸の中へと倒れ込んだ。


「おいっ、大丈夫か?」

「ははっ……少し、神気を吸われ過ぎたようだ。何心配ない、そなたに抱かれていれば直戻る」

「俺の霊力を吸うのは勘弁してほしいが?」

「大丈夫だ。穢れに当たりすぎたのがそもそもの原因、だから俺を抱いていてはくれぬか?」

「……」


 どうしてだろうか。真面目な空気のはずなのに、理仁は何処か納得がいかなかった。心の中でこの状況に乗じて、三日月が自分をいいように弄んでるのではないかと思えたが。仕方ない、とばかりに理仁は三日月を抱き締めて背を撫でてやる。一期の視線が痛かった。

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