第9章 hell
エレベーターが地下に到着したと同時に、理仁は銃を構え銃口を向けながら地下へと足を踏み入れた。一期もそれに続く。漂う空気は何処か淀んでいて、穢れが充満しているような嫌な臭いがした。恐ろしいくらいの静寂に包まれ、彼らの足音しか響かない。
薄暗い視界に徐々に目が慣れ始めた頃、自分達を囲んでいる物を目にして理仁は驚愕した。
「これは……一体」
四方八方、中身のないカプセルが大量に並んでいた。ごぽごぽと奇妙な音を立て、カプセルの中は水だけが満ちている。気味が悪い。
「主殿、これは……」
「俺の推測だが、恐らくある程度このカプセルの中に人間が入れられていたんじゃないかと思う」
「人間が? なんで、またそんな惨い」
奥に進むと二人の進行を邪魔するような、大きな門のような扉が姿を現す。ふと、一期は扉に誰かが縛り付けられているのを目にし、反射的に駆け寄った。
「おいっ、一期!」
「主殿! この方は……ッ」
仕方なく理仁も駆け寄れば、縛り付けられている人物を確認して更に驚愕することとなる。
黒い髪、白い肌、瞳は閉じられていて確認できないが青を基調とした高貴な着物。見間違えるはずがなかった。理仁は震えてしまいそうな唇を噛んで、辛うじて言葉を吐いた。