第8章 laboratory
「あ、主殿! 何故地下に向かわれるのですか!? 元来た道を行く方がよいのでは……っ」
「ここは現代じゃない。特殊な異空間、本丸と同じ異次元になる。まともに正面から出て見ろ、囲まれるのが落ちだ。なんとかして、本丸の連中と連絡を取れないか探る方が良い」
「ではそこでどうして地下に?」
「……そこに地下のボタンがあったから」
一期は何か言いたげにしながら、じと目で理仁を凝視した。すると理仁は「冗談だ」と付け加えたが、最早一期には冗談であろうとなかろうと、どちらでもよかった。
「地下があるということは、大きく研究室が設けられている可能性がある。あの男……人工的に歴史修正主義者を作り出す、と言っていた。ということは、大きな研究施設があってもおかしくない。それは確実にこの地下にあるはずだ」
「主殿は勇敢ですね。怖いと思ったりはしていないのですか?」
「怖くなんてないさ。俺が本当に怖いのは……今ある一番大切なものを、失うことだ」
エレベーターは静かに地下へと向かい下りていく。理仁の言葉に続きはなく、また一期も気を引き締めるためかそれ以上何も言わなかった。窓から見える景色が消え、中は暗黒に包まれる。
理仁は手に銃を構えて、戦闘態勢に入る。
「(悪いな、国広。すぐ……帰るからな)」
それまでどうか、この命が尽きることのないように。