第8章 laboratory
「姉さんは何故付喪神と共に闇落ちしようとした? そして、何故失敗した?」
「なるほど……君はそこまで知っているのか。なら君にも教えてあげてもいいかもしれないね! ああそういえば……今日は山姥切国広と一緒じゃないんだな」
男の視線はねっとりと絡み付くように、一期をじろりと見つめた。あまりの不快感に険しい表情になる一期を庇うように、理仁は男の視界から一期を背に隠した。
「そういうところが賢い、君は。君は……少なくともわかっていたんだろう? 彼を連れてくれば、よくないことが起きることを」
「……そうだな。俺は元々お前達政府を、信用しているわけじゃないんだ。姉さんを審神者にして、何かをさせようとしていた! それがわかっている時点で、信用なんてするはずもない」
「馬鹿な奴はね、そういうことにも気付けないものだよ。それに比べれば、君は非情に優秀だ。だから君を呼び出した」
本題だと言わんばかりに男が指を鳴らした。するといきなり武装した連中が飛び込んできたかと思えば、すぐに理仁を捕え押さえ込んだ。
「主殿っ!!」
一期が動こうとすると、理仁の頭に銃が突き付けられたことで動きを止める他なかった。その光景に、男はやはり笑うのだ。
「あっはっは! 惨めだねぇ、一期一振君。彼の危機をいち早く察知し、ここまで着いてきたのかもしれないがそれは無駄だったということだ。どんな刀剣が来ても同じだ! 審神者を先に捕獲してしまえば、あとはどうとでもなる」
「主殿を、貴方はどうするおつもりだ!」
「私の野望はね……理仁君、一期一振君。この世界を改変して、私だけの楽園を作ることなんだ!!」
「らく……えん」
理仁は押さえ込まれたまま、なんとか男を睨み付けて彼の言葉を声に出し反芻する。男は理仁へと近付くと、見下しながら口を開く。