第8章 laboratory
「よく来たな、宝条理仁。上位五位入り、まずはおめでとう。そう告げるべきかな?」
「お褒め頂きありがとうございます。とでも言えばいいか?」
「宝条様!」
「あっはっはっ、いいよ。楽にしてくれて。私はね、早く君に会ってみたかったんだ」
灯りが付いたかと思えば、目の前には大きなモニターがありそこに一人の男が映っていた。優しそうな笑みを浮かべているが、理仁からすれば胡散臭い笑みだと思えた。人を騙して利用してきたような、そんな想像をしてしまえるような濁った瞳に見えた。
「理仁君、君は……もっと上を目指せるんじゃないのかな?」
「何のことだ」
「成績の話だ。私が言うのもなんだが、君は頭がいい。それは単純な計算とか、現代で言う学に関する良さとかではない。君は単純に、人間として頭がいいと思うのだ」
「どういう意味か、わからないな」
「馬鹿な人間というのはね、単に頭が悪いとかそういうんじゃないんだ。本当に馬鹿な人間というのは、間違っていることに気付けない。そこに罠が張ってあることに気付けない、人の悪意を見破ることが出来ない。信じることで幸せになれると本気で思っていたりする! 無知は悪だ。無知ゆえに人に利用され馬鹿を見る」
「……それで? 用件はなんだ」
「どうだい? この項目に、君のお姉さんは当てはまっていたかな?」
男がそう口にすると、理仁は銃を取り出し瞬時にモニターを射撃し壊した。室内には銃声と、大量のガラスが割れ壮大な音と共に床へと崩れ落ちていく。
「あっはっはっ! 君、面白いね」
モニターで隠れていて見えなかったが、壊れた向こう側には先程までモニターで映っていた男が愉快そうに気持ち悪い笑みを浮かべて椅子に座っていた。