第8章 laboratory
「わかった。刀剣は……そうだな、一期一振」
「おや、山姥切様ではなく?」
「あいつはうちの自慢の部隊長だからな、俺のいない間は本丸を任せたい。別に構わないだろう?」
「……いいでしょう。では、すぐに支度を」
そこで一旦話を終えると、理仁はすぐさま広間へと戻った。とっくに食事は開始されており、理仁が姿を見せたことで思い思いに皆顔を上げた。
「理仁、早く座れ。ご飯が冷めるぞ」
「食べながらでいい、皆に聞いてほしいことがある。俺は政府の命で今日、現代に一度戻ることになった。出陣は今日はなし、一期は俺と共に来い。以上だ」
「ちょっと待て! 何故一期一振があんたと一緒に行くんだ! そこは……俺がっ」
がたんっと音を立て、山姥切は立ち上がった。理仁自身、この反応は既に予測済みなのだろう。驚く様子を見せない。理仁は淡々と山姥切へと言い放った。
「国広、お前には俺のいない本丸をしっかりと守ってほしい。これは俺がお前を信頼している証でもある、駄目か?」
「……っ、卑怯だ。そんな言い方」
食卓には異様な空気が流れ始める。昨夜、理仁と祈祷の話をした一期と石切丸はより一層暗い面持ちで俯いている。無理もない。昨日の今日だ、こんなにもすぐ嫌な予感とやらが忍び寄ってくるとは思ってもいなかったろう。
理仁は再び席につくと、無言で食事を進めるのだった。いつも変わらず美味しいご飯も、今日だけは少しだけ味がしなかった。
食事を終えれば、理仁の部屋に一期と石切丸が集まっていた。