第8章 laboratory
「主さん、おはようございます」
「おはよう堀国。今日も美味しそうな朝食だな」
「お褒めに預かり、光栄です。なんてね」
「いいからてめぇ、早く座りやがれ。仕方ねぇから、俺の隣に座るのを許可してやるよ」
「和泉守は相変わらず偉そうだな。堀国、隣いいか?」
「どうぞ」
「てめぇっ! いい性格してるじゃねぇか!!」
相変わらずの賑やかな食卓だ。堀川の隣に腰掛ければ、自然と理仁のもう隣を埋めるのは山姥切だった。このまま特別なことなんて何もなく、変わらない日々が続く……と思われた。
「宝条様、もう起きていらっしゃいますか?」
「こんのすけ」
広間に現れたのはこんのすけだった。こんのすけは尻尾でちょいちょい、と理仁を呼びつけた。他の者達には先に食べているよう言いつけると、理仁はこんのすけの方へと近寄った。するとここでは話しにくいなどと言われ、物置部屋へと移動することとなった。
その時点で、理仁は薄々何かを感じていた。昨夜の石切丸の祈祷を話を思い出しながら。
物置部屋に着けば、こんのすけは澄ました顔で尋ねて来た。
「本丸での生活も慣れましたか?」
「そうだな、ある程度は。審神者の上位にも無事なれたし、今は大きな問題もないな特には」
「それは良かった。ところで……政府の上層部が一度宝条様にお会いしたいと仰っておりまして、お願い出来ませんか?」
「上層部とやらは、俺に一体何の用なんだ」
「そこまでは私も知りません。ただ……貴方に拒否権はない、とだけ。ああそれと、刀剣の同行は許可されておりますので、お好きな刀剣をお連れ下さい」
「いつ、向かえば?」
「今日にでも」
急な話であった。しかし理仁は内心いい機会だと思っていた。佐伯からはこれ以上の姉に関する情報を得ることは出来ないだろう。ならば、後は自ら収集するしかない。それが今、だと思えた。