• テキストサイズ

刀剣乱舞 盤上のクロッカス

第8章 laboratory



「狐の姿をしていた、と?」

「……ッ!」


 理仁がそう口にすれば、一期は焦ったように辺りを警戒していた。だがそれによりどんな狐なのか、そこまで想像出来てしまった。


「安心しろ、夜は基本的に活動できないよう俺が改造しておいた。俺も、奴には知られたくないことが山ほどあるものでな」

「……それを聞いて安心しました。その、貴方にいつも助言して下さっている狐、こんのすけ殿がどうも怪しいのではないかと睨んでおります」

「俺は最初からあいつは怪しいと踏んでいた。だがまだその時じゃないと思い、放置していたんだ」

「では……」

「そろそろ、俺が何か掴んだことを悟られ始めているのかもしれないな」

「主殿は一体、何と戦っておられるのですか?」


 一期がそう尋ねると、理仁は少しだけ意外そうにしたが、すぐに何でもないことのように答えた。


「さあな、俺は自分の大切なものを守るために……力を惜しまない。ただそれだけだ」

「私達では、頼りになりませんか?」


 真っ直ぐに理仁を見つめる一期の瞳は、決意と覚悟に満ち強固な光を持っていた。一期を信頼していないわけではないだろう。それは他の刀剣達にも言えること、だが……。


「悪いな。譲れないこともある」

「……わかりました。ですが、これだけは覚えておいて下さい! 私達は貴方の声に、いつでも応えてみせます。この身は主である貴方様のもの。存分に、お使い下さい」

「やめてくれ。俺はそんな器の持ち主じゃない」


 ただ理仁は困ったように笑って、けれど小さく「ありがとう」と呟いた。何気なく理仁が一期の頭を撫でると、一期は顔を真っ赤にして更に俯いた。

/ 161ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp