第1章
でも、そのとき。
浪士一
『ぎゃああああああっ?!』
彼らの絶叫が聞こえてきた。
『な、何……!?』
静かに隠れ続けているのが、
本当なら一番賢い行動だったんだと思う。
でも……。
浪士二
『畜生、やりやがったな!』
浪士三
『くそ、なんで死なねぇんだよ!
……駄目だ、こいつら刀が効かねぇ!』
私は、怖かった。
人の命を削り取る可能性を秘めた
得体のしれない何かが間近に存在している。
その可能性を考えると
怖くて怖くてたまらなくなった。
そして私は、
その【何か】を知ろうとしている。
路地から顔を出し、駆けてきた道を覗き込む。
そのとき、私の目に写ったのは―――
月明かりに照らされた白刀の煌き、
ひるがえる浅葱色の羽織。
―――助けてくれたの?
そんな甘い考えは一瞬で吹き飛んだ。
???
『ひ、ひひひ』
浪士三
『た、助け―――』
浪士は命を守るように後退る。