第1章
話してわかってくれそうな相手じゃない。
………。
こういう時は、
逃げるが勝ちっていうんだ!
私はきびすをかえすと、一目散に逃げ出した。
浪士二
『――あ?! おい、待ちやがれ小僧!』
人影のない野次裏まで、浪士たちは、おってきた。
『もう、しつこいなぁ……!』
ずいぶんはしったきがするけど、
まだ浪士たちは怒鳴りながら追いかけてくる。
私は常に狭い路地を駆け抜ける。
彼らがまだ追いついて来ないのを確認して、
私は家と家の間に身を滑りこませた。
たてかけられた木の板は、
しゃがみこんだ私の姿を覆い隠している。
これでうまい具合に
やり過ごせるといいんだけど……。
『……あれ?』
私は思わず首を傾けた。
どこに行ったんだ、と彼らが声を上げる場面を想像していたんだけれど……。
いくら待っても浪士たちは現れない